高校の時、模試かなにかで現代文として山本文緒「庭」が出題された。 当時のことはよく覚えていない。 ただ、涙で答案が読めなかったのを覚えている。 文字から情景を浮かべるのにかなりの困難があることを自覚していて、普段小説なんて読まない学生だった(今も)が、いたく感動した高校生の私は文庫本「ファースト・プライオリティ」を買って中学の技術の時間に作った小さな本棚に入れていた。
父親に部屋を明け渡して5年、――父親が単身赴任する前は父親の部屋だったのだが――かつて自分の部屋だった部屋はすっかり本の山になっていた。 部屋に残していったはずだが、どこに行ったのかわからないひだまりスケッチやAチャンネルと同様に山本文緒もどこかに行ってしまった。 本当は平田オリザ「分かり合えないことから」を偶然丸善で見つけて、そういえば昔買って読んだなというのを思い出し、折角東京の家に大きい本棚を買ったのだから持って帰ろうと思って父親の本の山を漁り始めた。 結局平田オリザは見つからなかったが山本文緒と途中で挫折した志賀直哉「暗夜行路」を発見した。 暗夜行路は置いていった。
10年ぶりくらいに「庭」を読み直した。 10年ぶりくらいに小説を読んで涙を流した。 そもそも小説を読むのがほぼ10年ぶりぐらいではあったのだが。
ツイッターを検索して、「庭」が出題されたのは2014年の進研模試らしいことを知った。 そして山本文緒が2021年に亡くなっていたことを知った。 ネタバレになるので詳しく書けないが、「庭」は身近な人物の死と弔いそして愛情についての短編である。
時の流れを感じずにはいられなかった。